水不足や、干ばつの酷かった今年の夏のイタリアに、ようやく恵みの雨が降っている・・・そんな感じです。
しかし田畑には恵みの雨でも、野外オペラ公演には残念な雨でもあります。
有名なヴェローナのアレーナ野外オペラ。今週の日曜日まで公演が続きます。どうなることやら。
昨日は小雨の中をそのアレーナへ。
知り合いの関係でチケットを頂いたので、『トゥーランドット』を観に行って来ました。
若い声楽を学ぶKさん。本当はご両親と旅行で来られるはずだったのがご両親が都合で旅行をキャンセル、でもチケットのキャンセルは出来なかったので、友人を通じて私たちに声がかかりました。なんてラッキー!
初めて会ったその若い日本人女性にはチケットのお礼に夕食をご馳走して、プログラムを買ってお土産にしていただきました。
彼女と合流してピザを食べて楽しくお喋り・・・ってとこまでは順調だったのだけど、残念ながら天気予報がドンピシャで、夕方から黒い雲が空を覆い始め、開演一時間前にはとうとうシトシトと雨が降って来ました。
今までに、開演後に途中で雨が降り始めて中断とか中止ってのはありましたが、開演前から降っている状況は初めて。
どうなるんだろうね、と言いながらもとりあえずアレーナへ向かいました。
雨が降っていても開場が始まっていたので、Kさんが早く中が見たいだろうと入場。
会場ではプログラムや台本と一緒に簡易雨合羽が売られていました。(ちなみに5€)
私とKさんは簡易雨合羽を持っていたのですが、夫は仕方なく購入、会場中が色とりどりの雨合羽や傘に彩られている中、今度は長ーーーーい待ちが始まりました。
待つ気満々の皆さん。 |
座席は3列目ほぼ中央。凄い席です。エキストラの小芝居までまじまじと見える距離。
ゼッフィレッリの演出なので細かい細かい!
ちなみに私、こんな良い席でアレーナでオペラを観たことはかつてありません。
近っ!!! |
客層は裕福な観光客が主で、イタリア人はポツポツ。
一列目はVIP席なのか、みなさんシャンパンとかお飲みになって優雅優雅。ちなみにシャンパンはヴーヴクリコでツマミはパルミジャーノでしたわ。
イタリアなんだし近いんだからフランチャコルタにすればいいのにっ!と心の中で突っ込んだフランチャコルタファンの私。
スタンド席の観客が退屈しのぎにウェーブとかして盛り上がっている中、私は普段見られないVIP席の観察なんぞしながら時間を潰しておりました。
9時の開演でしたが、時間が過ぎても中止のアナウンスはなく、「天候のために開演が遅れております。しばらくお待ち下さい」という案内ばかり。
一音も出さずに中止をすると、全額払い戻しになるので、アレーナ側も小雨の合間に少しでも公演を始めてしまいたいと思っているのは明らか。ちなみに、一般的に野外オペラは1幕を演奏し終えない限りは払い戻す、という規定があるみたいなんだけど、アレーナは一音でも演奏すれば払い戻しが無いのだそうです。
HPにも「公演が始まる前に中止になった場合のみ払い戻す」と書いてあります。ちょっと酷くないか、これ?
まぁ、その商魂逞しい興行主の怨念が通じたのか、やがてそのチャンスがやって来ました。(悪運強し!?)
時間にして夜10時。開演時刻から1時間も過ぎていました。
よくまぁ、私たちも待っていたこと。
雨が止みそうになって、舞台とオケピットを拭きまくるお掃除部隊が現れました。
ちなみに彼女達は昨日3回も登場・・・。昨日最もお天気に翻弄されたのはこういう裏方さんだったと思います。
やがてライブラリアンが楽譜を譜面台に設置し始め、わらわらとオケのメンバーが楽器をケースごと持って現れました。
あぁ、そしてとうとう指揮者が登場!開演です!!!
ちゃらら~ら~らっ!ちゃん、ちゃん、ちゃん・・・・ぽーぽろでぃーぺきーの~、ら れっじぇーえくえすとっ!
とマンダリーノが歌ったところでまた雨が・・・。
↓こちらの動画でぜひこの出だしをお聞き下さい。(笑)
・・・中断です。
ちなみにどんなにポツポツ雨でも中断するのはオーケストラの楽器のためです。
特に弦楽器、木管楽器あたりがデリケート。
だから、ポツっ!と来たらオケは演奏をサクッとストップ。
観客には酷ですが、高価でデリケートな楽器なので仕方がありません。
再び「お待ち下さい~」のアナウンスがあり、中には諦めて帰ってしまう人も。
私の隣で開演を待ちながらiPhoneでパヴァロッティの『誰も寝てはならぬ』を聴いていたスペイン人のおじさんはこの時点でリタイア・・・。そのビデオをアレーナ内で聴く事で満足したのだろうか?(˘・з・˘)
しかし約20分後、急に風が吹き始めて天候が好転!再びお掃除部隊が現れ、大急ぎで開演の準備が始められました。会場の雰囲気も一気に明るくなり、慌てて席に戻るVIPたち。(シャンパンのスタンドに行っていたと思われる)
そして袖から駆け足で指揮者も現れ、挨拶もソコソコに演奏が始まりましたーーーー!
一幕が無事に終了し、休憩は取らずに場面転換だけで二幕に突入。(これがいつもの事なのか、それとも昨日だけの処置なのかは不明。でも努力は認めたい。特に歌手の皆さんの)
しかし・・・二幕一場が終わろうとする頃に、また空気が雨っぽくなって来ました。
続く二幕二場はいよいよゼッフィレッリの演出の真骨頂である豪華絢爛なセットがオープンに。
おぉぉぉ~と、盛り上がる観客!
しかしその時、小さな雨粒が落ち始めました。
多分だが、指揮者はテンポを巻いていたと思います。せめてタイトルロールの登場のアリアまでは・・・!と。
そして水色の衣装を着たトゥーランドットが登場し、アリアを歌い始めました。
前夜この曲を歌ったばかりの私は、急に分析モードに入って聞き入ってしまいました。(職業病)
しかし雨は無情。
このアリアの最後にテノールが入ってくる最高に盛り上がる部分の手前で、オケがストップ。
観客席中にあぁ、残念~~~~な空気が流れたけど、舞台の上の歌手達も残念そう。そりゃそうだろう。
というわけで、この日の公演はここで終了。
アリアの残りの部分は自分で歌いながら帰途につきました。(誰も聴いてないけど)
結局私が聴きたいところは殆ど聴けず終いであったけど、雨の中の待ちぼうけも楽しい経験だった一夜でした。
Kさん、本当にありがとうございました。
そして、やはりオペラは良い席で観るのが一番、と言う事を再確認したビンボー夫婦の私達でした。
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