生きていると、たまにめちゃくちゃ嬉しくて泣けてくることがある。
納得できる演奏が出来た時。
誰かの役に立てた、と実感した時。
ユキさんが100%安心しきって私のそばで眠っている時。
大切な人が本当に心の底から笑っている時…。
どれもほんの小さな事だけど、自分にとって心の底から湧いて来る喜びは、時々コントロールが効かなくなって思わず涙がこぼれることがあるのだ。
昨日、そんなことが起きた。それもレッスン中に。
音楽教室の生徒で、もう4年目になるノエミ、16歳。
ずっとポップスを歌う勉強をしていたのだけど、2か月ほど前から「クラシックの歌をやってみたい」と言って、方向転換したばかり。
もともと彼女は声としてはクラシックの方が合っているとは話していたのだけど、好みまで強制するわけには行かないので、そのままポップスをやってきた。
彼女の中で何かきっかけがあったのか、詳しいことは分からないけれど「やりたい」と本人が言うので、もうその翌週から一気に舵を切り替えた。
思った通り、発声練習からして声の出方がのびのびしている。
彼女自身もその感覚に面食らっている様子だが、楽しそうに歌い始めた。
とりあえず「歌ってみたい」と思わせる曲を、と思い、ケルビーノのアリア『Voi che sapete』とベッリーニの歌曲『Vaga luna che inargenti』を選んだ。
ソルフェージュの基本が少し足りないので譜読みには苦労したようだが、少しづつ音程もリズムも正しく歌えるようになってきていた。
そして昨日。
発声をしてVaga lunaを、いつも言っているいくつかの注意事項を確認してから歌い始めた。
本当に大げさではなく、彼女は今出来る事を全て気を付けながら、最後まできちんと歌い切ったのである。
その集中力に、その努力に、そして私を信じて頑張ってくれている姿に、気が付いたら涙が込み上げて来ていた。
そんな私の状態にびっくりしているノエミに、なぜ泣いているのかの説明がきちんとできたとは思わないが、まぁそんなことはどうでも良いのである。
教える方も教えられる。なんて幸せな仕事!
こんなに嬉しい気分は本当に久しぶりだった。
もしかしたら、自分が「良く歌えた!」と思うよりも嬉しかったりするかも…。
頑張れ、ノエミ♪
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